末広がり
(05.07.12)

八は「末広がり」と言って
「次第に繁盛・繁栄する」「幸せが末永く続くように」との意味を持つ良い数と言われています。そういえば、末広がりに関する、商品・グッズが色々と売り出されているようです。


太郎冠者(たろうかじゃ)の狂言

(05.07.16UP)

大名が、家来の太郎冠者を呼び出し、引き出物として至急末広がりを調達してくるよう命じた。

大名「このあたりの大名でござる。太郎冠者(かじゃ)あるか。」
冠者「お前に。」
大名「たいそう早かった。汝を呼び出したのは、余の儀ではない。明日のお客の引き出物に、末広がりを出そうと思う。汝は大儀ながら京へのぼり、急いで求めてまいれ。」
冠者「かしこまりました。」
大名「急げ。」

・・・・・・・・・・・・
末広がりを求めに行った、太郎冠者は一人の男と出くわす。
わる者「これは京に住まい致すわる者でござる。何者かは知らぬが、わいわいわめいている。ひとつ当たってみましょう。---のうのう、そなたは何をわいわいわめいていられるぞ。」
冠者「それがしは、田舎(いなか)からまいった者でござる。末広がり屋を知らぬによって、かよう申すのでござる。」
わる者「それがしは、末広がり屋の主人でござる。」
冠者「それは仕合わせなこと。末広がりはござろうか。」
わる者「いかにも。」
冠者「急いで見せてくだされ。」
わる者「心得ました---はて、何を売ってくれようか。や、よいことがある。これにからかさがあるから、これを売ってやろう---のうのう、田舎の人、これぢゃ。」

冠者「や、それが末広がりでござるか。」
わる者「いかにも。」
冠者「なるほど、広げれば大きな末広がりぢゃ。ここに御主人の書きつけがあるによって、それに合ったらば買いましょう。」
わる者「では、お読み下され。」
冠者「まづ地紙よくとござる。」
わる者「これ、地紙とはこの紙のこと。きつねの鳴くくように、こんこんというほど、よく張ってござる。」
冠者「骨みがき。」
わる者「これ、骨みがきとはこの骨のこと。よくさをかけてみがいてあるによって、すべすべ致す。」
冠者「要(かなめ)もとしめて。」
わる者「こう広げて、この金物でじっとしめるによって、要もとしめてでござる。」

ここで、値段交渉に入る太郎冠者であるが、まんまと高く買わされてしまった。

「殿様、ござりますか。」
大名「太郎冠者、もどったか。」
冠者「帰りました。」
大名「大儀であった。急いで見せい。」
冠者「はっ。」
大名「これは何ぢゃ。」
冠者「末広がりでござります。」
大名「これが。」
冠者「はあ。殿様の御合点まいらぬも道理でござります。こう致しますと、ぐっと広がります。」
大名「いかにも大きな末広がりぢゃ。して、あの書きつけに合わせてみたか。」
冠者「合わせましたとも。お読み下され。」
大名「まづ地紙よく。」
冠者「それこそ気をつけました。これ、この通り、きつねの鳴くように、こんこんというほど、よく張ってござります。」
大名「骨みがきは。」
冠者「これ、この骨でござります。とくさをかけてみがいてあるによって、すべすべ致します。」
大名「要もとしめては。」
冠者「こう広げまして、この金物でじっとしめます。」

大名「やい、太郎冠者。そちは末広がりを知らぬな。末広がりとは、扇のことぢゃ。おのれは古がさを買うてきて、やれ末広がりで候の、骨みがきで候のと申しおる。すさりおろう。」
冠者「お許しくだされ------そういわれれば、なるほどこれは古がさぢゃ。これは、はんなことになりおった。おお、そうぢゃ、あれをはやして、ごきげんをなおそう。

えいえい、
かさをさすならば、
人がかさをさすならば、
おれもかさをさそうよ。」

大名「や、おのれ、買い物にはまんまとだまされて、申しわけに、はやしものをするとは。いやいや、あきれたやつめ。や、これはこれは。や、これはおもしろいぞ。

げにもそうよ、 げにもそうよの。 かさをさすならば、 人がかさをさすならば、
おれもかさをさそうよ。 げにもそうよ、 げにもそうよの。


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